生き残りをかけた戦略

うるさかったセミの声が聞こえなくなり、夏も終わったなぁ…と感傷的になるのは生き物の姿を目にすることが極端に少なくなるからではないかと思います。

毎年、そんな季節の変化に抗う最後の虫がカマキリではないでしょうか。

カマキリは手が鎌のような形をしていて顔が三角でカラダが細長く、あまり可愛くない生き物だと感じる人も多いかもしれません。

可愛くないというよりも気持ち悪い…怖い…などと悪い印象しかないという人がほとんどなのかも。

それでも、まあ生き物として生きているのですからそれなりに眺めてみるとそこそこ可愛いものです。

去年の10月頃だったと思いますが、洗濯物を取り込んだ際にそのカマキリが部屋の中に入ってきたことがあります。

何度か外に出したのですが、またいつのまにか部屋に入ってくるのです。

外が寒くなってきたからかなぁ…と、そのまま部屋の中に放置することにしました。

彼女(雌です)はカーテンにへばりついて、時にはレールの上に移動してじっとこちらを見ていたりします。

ときどきどこに行ったか分からなくなるので、踏んじゃったりすると悲惨だからそのたびに気になって結構真剣に探したりします。

意外なところで息を潜めていたりして、見つけると何故かほっとしてしまうのです。

そのうち、何も食べるものがないとひもじいだろうと思い彼女が食べそうなものを冷蔵庫を開けて物色してみました。

カマキリはたぶんあの手の鎌でチョウやガなどの羽虫を捉えて食べるのだろうから動物性のタンパク質であれば食べるのではないか…?

そう思い、とりあえずサイズ的にちょうどいいだろうシラスがあったので、それを楊枝に突き刺して彼女の目の前に差し出してみた。

すると…手の鎌で捉えて食べるではないか…

こうしてカマキリとの短い交流が始まりました。

やがてシラスはカニカマに変わりました。

カニカマは魚のすり身を繊維状に束ねてある食品で私たちはよくサラダなどの生野菜に添えて食べますが、その繊維をばらして小さくして箸でつまみ彼女の目の前でゆらゆらさせるのです。

あたかも生きているチョウやガが彼女の目の前を飛んでいるがごとく…

すると彼女の手の鎌がそれを瞬時に捉え、あとはゆっくり小さな口で咀嚼するのです。

栄養のバランスを考え、ときには箸の先端にヨーグルトを付けて口元に持っていったりするとしっかりと口を動かして体内に取り込んでいるのだから生きることに前向きです。

水分補給も大切なので、コットンに水を含ませて目の前におくと綿をかじるようにして水を体内に流し込んでいる様子だ。

このようにして毎日彼女が食事をしていることに妙な満足感を感じていました。

食べるということは当然排泄も自然の流れです。

黒い小さなゴマのかけらのようなものが転がっていたりするので、ティッシュで拭き取ります。

そうこうしているうちに外は本当に寒くなってきました。

ある日、家の外に巨大なカマキリを1匹発見したのです。

それは彼女よりも一回りも大きなやつで、家の中に招き入れたらきっと彼女は食べられてしまうだろうなぁ…って思いました。

なので、彼女に与えているようにカニカマを与えることにしたのですが見向きもしませんでした。

思うにそのカマキリは自然環境の中ですでに生命を全うしているのではないかと…

数日後にそのままの姿で息を引き取っていました。

潔いというか当たり前というか…

そうこうしているうちに家の中で暮らすようになった彼女のほうも次第に食欲が減退しているようでした。

寿命というものがあるのだと思います。

いくら環境が整っていても寿命はなかなか伸ばせないのでしょう。

それでも、彼女は家の中で2カ月暮らしていたことになります。

本当は猫が飼いたいのだけど、家族が反対するので虫だったら…と自由にさせてくれていたのですが途中から家族も彼女のことを気にするようになって率先して食べ物を与えていたのです。

実は彼女が産んだ卵がプラスチック容器に入れられて部屋の中にあります。

もしかしたらある時期が来たら中からうじゃうじゃ…なんてことになるかもしれません。

生き物にはわくわくさせるようなエネルギーがあります。

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